少し前に、高校の授業料が無償になった話を書きました。
所得制限で弾かれ続けてきた私にも、やっと当てはまる制度でした。
・・・正直に言うと、あのとき少しほっとしていました。
でも、その先の数字を見て、手が止まりました。
まず、意外な数字から
中学を卒業したあと、高校に進む割合です。
| 中学卒業後の高校等進学率 | |
|---|---|
| 母子世帯 | 94.5% |
| 父子世帯 | 96.2% |
出典:こども家庭庁「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査の結果を公表します」
父子世帯のほうが、高いのです。
ひとり親でも、高校までは、ちゃんと行かせている。数字はそう言っています。
ところが、高校を出たあとで逆転します
大学・短大・専修学校などへ進む割合です。
| 高校卒業後の大学等進学率 | |
|---|---|
| 母子世帯 | 66.5% |
| 父子世帯 | 57.9% |
出典:こども家庭庁「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査の結果を公表します」
さっきと、上下が入れ替わりました。
そして、進路の内訳を見ると、もっとはっきりします。
| 高校卒業後、最も多い進路 | |
|---|---|
| 母子世帯 | 大学 41.4% |
| 父子世帯 | 就労 36.1% |
出典:こども家庭庁「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査の結果を公表します」
父子世帯の子どもで、いちばん多い進路は「働くこと」でした。
全体と比べると
国が、参考として全体の数字を並べています。
| ひとり親家庭 | 全体 | |
|---|---|---|
| 高校等への進学率 | 94.7% | 98.8% |
| 大学等への進学率 | 65.3% | 83.8% |
出典:こども家庭庁「こども・若者、子育て家庭を取り巻く状況について」 ※ひとり親家庭は「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」、全体は文部科学省「学校基本統計」(令和4年5月1日現在)。資料には「算出方法が異なることに留意」と注記されています。単純な引き算はできません
国の資料にも、はっきり「算出方法が異なる」と書いてあります。だから「18ポイントの差」と言い切ることはできません。
それでも、高校まではほぼ変わらず、大学の手前で差がつくという形は、同じです。
なぜ、高校の先で差がつくのか
ここからは、私の考えです。
高校までは、制度があります。
授業料の支援には所得制限がなくなりました。就学援助も、奨学給付金もあります。
でも、その先はどうか。
・・・大学は、桁が変わります。
入学金、授業料、下宿するなら家賃と食費。奨学金という名の借金もあります。
そして、こういう数字もあります。
| 子どものいる世帯の平均所得(令和3年) | |
|---|---|
| 夫婦と未婚の子のみの世帯 | 815.3万円 |
| ひとり親と未婚の子のみの世帯 | 398.4万円 |
出典:こども家庭庁「こども・若者、子育て家庭を取り巻く状況について」(厚生労働省「国民生活基礎調査」より)
半分以下です。
高校までは、制度がその差を埋めてくれます。大学からは、埋めてくれません。
・・・だから、そこで分かれるのだと思います。
ただ、上がってはいます
暗い話だけで終わらせたくないので、これも書きます。
ひとり親家庭の子どもの大学等進学率は、こう動いています。
| ひとり親家庭の大学等進学率 | |
|---|---|
| 平成23年度 | 41.6% |
| 平成28年度 | 58.5% |
| 令和3年度 | 65.3% |
出典:こども家庭庁「こども・若者、子育て家庭を取り巻く状況について」
10年で、23ポイント上がっています。
制度が増えたからです。高等教育の修学支援新制度、給付型奨学金、授業料の減免。
「ひとり親だから無理」という時代では、もうありません。
そもそも、大学に行くことが正解なのか
ここまで「進学率が低い」という書き方をしてきました。
でも、それは進学が正解だと決めつけた書き方です。そこは、いったん立ち止まります。
私が家計を立て直すときに参考にしたリベラルアーツ大学(リベ大)では、大学進学について、こう書かれています。
大学に行く必要があるかは皆さん自身の人生の目的によって異なる
数年間の時間や数百万円の学費は、決して低いコストではありません
出典:リベラルアーツ大学「【大学に行く意味とは?】大学に行くべきかを判断するのに知っておいてほしいこと」
「なんとなく大学に行く」ことは、はっきり勧めていません。目的があるかどうかで決めるべきだ、という立場です。
両学長ご自身も、高校卒業後に進学せず、事業を始めています。そして「全く後悔をしていない」と書かれています。
就職を選ぶと、こうなります
お金の面だけで並べると、はっきりした利点があります。
学費がかかりません。大学4年分となると、数百万円です。
そして奨学金という名の借金を、背負わずに済みます。 家計が回らなくなった経験をした身としては、ここは軽く見られません。
さらに、4年早く働き始めます。その4年分の収入が、まるまる手元に残ります。
ただし、こういう数字もあります
生涯にわたって受け取る賃金の総額です。
| 生涯賃金(60歳まで・退職金を含まず) | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 高校卒 | 2億2千万円 | 1億6千万円 |
| 大学卒 | 2億6千万円 | 2億1千万円 |
出典:労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2025」(2024年) ※学校卒業後すぐ就職し、60歳までフルタイムの正社員を続けた場合の推計
男性で、4千万円ほどの差があります。退職金を含めて引退まで働いた場合は、高校卒2億8千万円・大学卒3億4千万円で、差はもっと開きます。
・・・これも平均です。全員に当てはまるわけではありません。
ただ、「学費を払わずに済む」と「生涯賃金が下がる」は、同じ天秤に乗っています。 どちらか片方だけを見て決めるのは、危ないと思いました。
で、私はどう考えたか
「行く」「行かない」で考えるのをやめました。
リベ大の言う通り、目的があるかどうかだと思います。
目的があって進学するなら、生涯賃金の差は投資として説明がつきます。目的があって就職するなら、学費を払わずに4年早く動き出せます。
いちばん良くないのは——目的がないまま、どちらかに流されることです。
そしてもうひとつ、良くないことがあります。
お金がないせいで、片方を最初から選べないこと。
統計に出ている57.9%という数字の中に、それがどれだけ含まれているのか。そこは、数字を見ても分かりません。
私にできること
数字を見て、決めたことが3つあります。
① 高校で終わりだと思わないこと
私はこれまで、高校のお金のことばかり調べていました。でも、いま差がついているのは、その先です。
② 制度を、いまから調べておくこと
役所で「何もありません」と言われた経験から、ひとつ学びました。制度は、知っていて、申請した人しか使えません。
大学の修学支援には所得の要件があります。うちが入るかどうかは、まだ分かりません。それでも、先に調べておけば、慌てません。
③ 「働く」を、負けにしないこと
父子世帯でいちばん多い進路が「就労」だと知ったとき、最初は重い数字だと思いました。
・・・でも、それは私の受け取り方の問題かもしれません。
お金がなくて諦めた「就労」と、自分で選んだ「就労」は、別のものです。統計は、そこまでは教えてくれません。
私にできるのは、お金で選択肢を減らさないことだけだと思っています。
まとめ
- 中学卒業後の高校等進学率は、父子世帯96.2%・母子世帯94.5%。父子世帯のほうが高い
- 高校卒業後の大学等進学率は、父子世帯57.9%・母子世帯66.5%。ここで逆転する
- 父子世帯の子どもで最も多い進路は「就労」36.1%(母子世帯は「大学」41.4%)
- ひとり親家庭全体は65.3%、全体は83.8%。ただし算出方法が異なるため単純比較はできない
- 子どものいる世帯の平均所得は、ふたり親815.3万円・ひとり親398.4万円
- 高校までは制度が差を埋める。大学からは埋めてくれない
- ただし、ひとり親家庭の大学等進学率は10年で41.6%→65.3%に上がっている
- 制度は、知っていて申請した人しか使えない
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